流産手術
妊娠したにもかかわらず早い時期に胎児が亡くなってしまい、妊娠22週までに妊娠が終わってしまうことを流産といい、その頻度は10~15%とされています。
手術をしなくても妊娠組織は自然に排出されることが多いですが、いつ排出されるかは予測できません。緊急性を要する腹痛や出血が起こる可能性があること、いつ排出するか不安に過ごさなくてはならないことを考えると、手術によって妊娠組織を除去することをおすすめしています。また、妊娠組織を病理検査に提出することで、胞状奇胎などの異常妊娠ではないことも確認できます。
手術の時期
妊娠11週までは、日帰りで手術を行います。
妊娠12週以降に子宮内胎児死亡となった場合には入院を伴う処置となりますので、入院設備のある施設をご紹介しております。
手術の方法
当院では子宮内膜へのダメージを最小限とするため、子宮内を掻爬するのではなく手動真空吸引法で行っています。事前に子宮の出口を広げるための痛みを伴う処置はなく、手術当日の在院時間を短くできます。
麻酔は強いご希望がなければ子宮への局所麻酔(傍頸管ブロック)で行っています。ご相談の上で眠る麻酔(静脈麻酔)も選択いただけます。
流産手術の流れ
手術当日(病院にいる時間は概ね2時間以内です)
- 麻酔を行い、手動吸引法で子宮内容を除去します。
手術は10分~15分程度で終了します。 - リカバリー室で1時間程度お休みいただきます。眠る麻酔(静脈麻酔)を行った場合はしっかりと目が覚めるまで2~3時間お休みいただきます。
帰宅前にも超音波検査でしっかりと確認をさせていただき、帰宅後の注意点や疑問点につきましてもご説明いたします。術後薬を処方いたします。 - ご帰宅
- 翌日または翌々日の診察
手動吸引法では子宮の出口を大きく広げないため、手術後に血液が子宮内に貯まりやすい傾向にあります。そのため、翌日または翌々日に超音波検査で確認をさせていただいています。 - 1週間後検診
超音波検査で出血の有無や子宮の状態を確認します。
起こりうる合併症とその対策
子宮穿孔
妊娠子宮は柔らかいため、ごく稀に子宮に穴があくことがあります。穿孔の程度により、開腹または腹腔鏡下手術で修復を行うこととなる場合があります。
麻酔の合併症
ごく稀ですが局所麻酔中毒に注意が必要です。最小限の局所麻酔薬を分割して慎重に投与を行います。
静脈麻酔で注意すべきものとして呼吸抑制、低血圧、ショック、語嚥などがあります。
出血
子宮収縮が不良の場合は出血が多くなることがあります。子宮収縮薬の投与を行います。
感染症
術後に子宮内に感染を起こす可能性があります。予防的に抗生剤の内服をしていただきます。
絨毛遺残
1~2%の頻度で妊娠組織が残ることがあります。ほとんどは自然に排出されますが、出血が続く場合や妊娠のホルモンが低下しない場合は、再手術での除去などが必要となります。
手術後の注意事項
- 術後の生活に制限はありませんが、お身体に負担がかかるようなことは避けるようにしていただいています。シャワー浴は当日から可能です。
- 強い下腹部痛、発熱、多量の出血などがあれば受診をしてください。
- 手術翌日および1週間後に診察をして、術後経過の確認や病理検査結果をお伝えしますので、必ず受診ください。
- 術後の月経は通常1~2ヶ月で始まります。子宮内をリセットするためにも、術後3ヶ月経過するか、2回目の月経が異常なく終わってから妊娠を考えるようにしましょう。